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『蘭ちゃんと門あさ美さん』

 ご存知の通りキャンディーズは1972年から1978年までの約6年間活躍した昭和を代表する3人組のアイドルである。伊藤蘭(ラン)、田中好子(スー)、藤村美樹(ミキ)の3人はそれぞれが独自に持ち合わせた愛らしさがあり、ファンの間では◯◯ちゃん派といって、他の人間が何と言おうと3人のうち誰のファンかは揺るぎないものがあった。私は断然ランちゃん派である。

 忘れもしないファイナルコンサートの次の日、ワイドショーで愛川欽也が『こんなコンサートに行く暇人が世の中にたくさんいるとは……』的なコメントをしたことに対し、私は死ぬまで愛川欽也という男を恨み通したくらい、キャンディーズファンなのである。そして心なしか、ピンクレディも恨んでいる。あれは敵である。

 引退記念の5枚組LPはお金がなくて買えなかったが、ファイナルコンサート3枚組は買ってもっていた。私はキャンディーズの曲全曲をイントロから歌える自信がある。

 ランちゃんは、なんと今年3月にソロデビューすることになった。デビューアルバムの広告を何気なく見ていたら、私は驚いてオシッコちびりそうになってしまった。なんと、あの愛する門あさ美さんが楽曲提供しているではないか。門あさ美さんに関しては、拙著『名誉唎酒師のばかやろう!』211ページ『sake.47 門あさ美恋酒論』に書いたが、彼女は1980年代の名古屋出身のポップスシンガーで、ヤマハのポプコン出身なのである。本選には出場していない。テレビなどメディアには殆ど出演しておらず、彼女のナマの人柄を知ることは全く不可能であった。コンサートやライブもしないので、一般人が実物を見る機会は皆無で、後から『何十年前に名古屋の何処其処で見た……』などという遅きに失した怪情報が出てくるような、完全に秘密のベールに包まれた存在なのである。彼女は曲の殆どを作詞作曲していて、洗練されたポップな曲調にプチエロティックな詞が絡み、何より当時二十四、五歳とは思えないアダルトな美貌とアンニュイな歌声は、中高生のまるおには鼻血がちろっと出てしまう程のインパクトを与えていたのである。彼女の魅力に取り憑かれてしまった私は、アルバム発売当日に即購入して、レコードが傷まないようにカセットテープへ録音し、テープがびよーんと伸びちゃうまで毎日聴いていたのである。彼女は、アルバムを発売すれば毎回オリコン即一位というアーティストであったのだが、1988年のアルバム『La Fleur Bleue』を最後に完全に姿を消してしまう。以来ずっと、正直私は今でも『あさ美を愛している』のだが、あまりに長い隠遁に本当のところもう鬼籍に入られているのではと思うことがある。

 伊藤蘭さんに提供した楽曲は、アルバム「My Bouquet」に『walking in the cherry』という題名で収録されている。伊藤蘭さんがオールナイトニッポンGOLDでコメントをしている。「門さん美しい方ですよね。多分この曲のデモテープの声もおそらく門あさ美さんが歌ってくださっていたと思うんですけれども、そのデモ曲を聴いた時に本当に素敵で、そのデモの時点で何度も何度もくり返して聴きたくなりました」と言っているので、生きててくれたら本当に嬉しいんだけど。

 門あさ美さんが生きていてくれて新しく曲を書いたのか、それともお蔵入りしていた曲が世に出てきたのかはわからないが、久しぶりに門あさ美さんの曲『50'sと80's』に出てきたカルヴァドスでも呑みながら青春を思い返してしまったまるおであった。