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『近場の秘湯』

 私まるおは『温泉ソムリエマスター一つ星』でもある。温泉というと遠方に行かなければいけないと思いがちだが、近場にも秘湯がある。

 温泉には10の泉質があり、それぞれ適応症(いわゆる効能)が違う。10の泉質とは①炭酸水素塩泉②硫酸塩泉③硫黄泉④単純温泉⑤塩化物泉⑥二酸化炭素泉⑦含鉄泉⑧酸性泉⑨放射能泉⑩含よう素泉である。残念ながら硫酸塩泉、硫黄泉、酸性泉、含よう素泉は近場には少ない。一番近くても、硫酸塩泉は下諏訪、硫黄泉は奥飛騨、酸性泉は草津あたりになるだろうか。

 ①炭酸水素塩泉は重曹泉とよばれるものであり、炭酸泉と間違える人がいるが、そうではない。冷えの湯といわれ、湯冷めしやすいため夏は湯上がりが涼しい。典型的な美人の湯で、毛穴汚れ、角質、垢を取るため、肌が荒れるので体を洗ってから入らないほうが良い。『愛西市 永和温泉 みそぎの湯(ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉)』は、入口に神社だか寺だかわからない怪しすぎる小さな宗教施設があり、本来は信者専用の温泉らしいが、一般の人も200円を納めて簡単な祈祷で入浴できる。完全源泉かけ流し。2人入ったら狭い湯船が3つあり、右奥の湯船が源泉に近く一番熱い。源泉温度が48℃以上あるため、3つの湯船をお湯が順番に通ることにより3段階の湯温が楽しめる。こんな小さな温泉なのに、湧出量が1分間に1300㍑あり、なんと1日に1300人を衛生的にまかなえる湧出量なのである。なのにいつもガラガラなのはまさに秘湯である。

 ④単純温泉は成分の少ない温泉。成分が少ないおかげで子供から年寄りまで入ることができる。『弥富市 ホテルフーバー(現:HOTEL NUQU)』は、とっても珍しく、ラブホテルなのに全室源泉掛け流し。単純温泉だがメタケイ酸がそこそこあるので美肌の湯と言ってもいい。難点は、ただただ温泉に入りたいだけの人には料金が割高だし、エッチなお相手がいないと入りづらい。

 ⑤塩化物泉は、海水の成分に似た食塩を含み、成分が多いとしょっぱい味がする。温まりの湯などと呼ばれていて湯冷めしにくいから冬は最高である。『半田 ごんぎつねの湯』は、溶存成分26,680mgの愛知県随一といっていい超濃い温泉。一部源泉掛け流し。舐めるとかなりしょっぱく、寝湯に横たわっても塩分で体がプカプカ浮いて流されてしまう。炭酸水素イオンが多く、お肌がつるつるし、美肌の湯でもある。

 ⑥二酸化炭素泉(こちらが炭酸泉)は、心臓の湯とよばれ炭酸ガスが皮膚から吸収されて、血管を拡張し、血液の循環をよくする。炭酸は高温度だと抜けてしまうため、冷鉱泉を低い温度に温めている場合が多い。低温でもゆっくり入ることによって体があたたまる。『木曽福島 二本木温泉 二本木の湯』は、日本では極めて珍しく強い二酸化炭素を含んでおり、スーパー銭湯の炭酸泉がアホに見えるくらいだ。ここはただ加温するだけではなく、冷たい源泉を加えたハイブリッド仕様なので炭酸が抜けにくく、湯船に入ると身体中にいっぱいの気泡がつく。源泉を口に含むとサイダーのように口中がシュワシュワする。

 ⑨放射能泉は、近場では中津川や恵那あたりに多い。猿投温泉も放射能泉である。放射能が含まれていると知らなきゃまったく特徴のない温泉が多い。『京都北白川 不動温泉』は含有量28.83マッヘの単純放射能冷鉱泉。放射能泉を名乗るには8.25マッヘ以上あればよいので、まあまあの放射能具合である。溶存成分は110mg程度で少ないのは、放射能泉にはよくあるタイプ。かけ流しではなく、循環濾過で消毒ありで、これも放射能泉にはよくある。放射能泉はミストを吸入することで効果が得られる(ホルミシス効果)ため、湯船の少し上の方から温泉がボトボトと落とされていて、霧状になった温泉を吸い込むと良い。

 我々温泉好きにとって、源泉かけ流しはとても嬉しい。濃厚でフレッシュだからだ。温泉分析表を見れば源泉かけ流しかどうかはハッキリわかるのだが、不確実ながら見分け方もある。①浴槽からお湯があふれていると源泉かけ流し。しかし、循環式も源泉の温泉が加えられながら循環している場合もあるので、浴槽からお湯があふれる場合もあるし、源泉かけ流しであっても、浴槽の構造によりお湯があふれない場合もある。②お湯に湯花がいっぱいで、ちょっと汚く見えるのは源泉かけ流し。③浴槽や湯口などに温泉成分が付着して石化していたり、変色していたりするのは源泉かけ流し。⑤湯口の温泉と浴槽の温度の差が5℃以上あるのは源泉かけ流し。⑥お湯が塩素くさいと循環式⑦浴槽内にお湯が噴出している箇所や強く吸っている場所があると循環式。

 愛知県近郊にはまだほかにも素晴らしい温泉があるのでぜひ楽しんでもらいたい。