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『日本の食文化の危機』

 先日、天ぷらスタンドという店に行った。安価で気軽に天ぷらを食べながら酒が呑めるというのがウリの店で、客層も圧倒的に若者が多い。天ぷらは、いわゆる『コツのいらない天ぷら粉』で揚げられており、重曹のおかげで衣にサクサク感があるが色が黄色く、粉の混ぜ過ぎでベニエの様になり、本物の天ぷらとは見た目がかけ離れている。東京銀座の一流店と比べてはいけないが、素材はともかく、衣の付け方、揚げ方、油の切れは全く別の料理といっていい。同じ『天ぷら』という料理なのに見た目から天と地ほどに差があるというのは、日本の食文化としてどうなのだろうか?若者がこの『天ぷら』を本物の天ぷらとして認知してしまったらと思うと将来に異常な寒気を覚える。

 同様に回転寿司もそうだ。かつては経済的に寿司が食べられなかった若年層も気軽に行けるようになった。それはそれで良いことではあるが、同時にあれが寿司であると認識されてしまうのは、頭が痛い。寿司タネの質や仕事はともかく、最悪なのは握り方である。タネとシャリのバランス、シャリへの力のかけ方こそが寿司の真髄であり、回転寿司のそれは、寿司文化を冒涜していると言っても過言ではない。外国人観光客も増えてきて、「本場日本で寿司を食ったが、まずかった」というコメントが多くみられる。他の外国人の「回転寿司じゃなくて本物の寿司屋はメチャクチャうまいぞ」というコメントが見られるのが救いだが。